SafetyFastブログ

趣味の重量輸送関連技術紹介と、投資関連知識の備忘録です。

超巨大LIEBHERR 500トンクレーンを市街地で使用

Hansebubeさん撮影の、LIEBHERR社のLTM1500(500トン吊り)オールテレーンクレーンを市街地の建設工事で使っている動画を紹介します。

動画や投稿者の情報から、撮影地はデンマークだと思われます。

 

www.youtube.com

THOMENという業者保有のLTM1500はLIEBHERR社で8軸の車体です。オールテレ(All Terrain)クレーンということで、重量物吊り上げができるのに加え、走行性を高いため迅速な配備が可能なクレーンになっています。

 

しかしながら無限軌道付のクローラークレーン(Crawler Crane)と比較すると、同じブーム長さ・作業班系での吊り上げ性能が劣ります。その簡便性から、クローラークレーンをくみ上げることが難しい市街地での作業や、比較的軽量の吊り上げ作業の場合に用いられます。

 

それでは実際の動画を見ていきましょう。

 

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hansebubuさんのCopylightから始まります。

 

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LTM1500の全景です。高さは約4m、幅3m、全長は20mあります。日本だとこのサイズは通行許可申請を行わない限り公道の走行ができません。以下Cranenetに詳細が紹介されています。

www.cranenet.or.jp

 

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自走してクレーン自体は現場に配備できるものの、道路の許容輪荷重の関係から、カウンターウェイトは別のトレーラーで運搬されることが一般的です。この動画でもトレーラーで別途運ばれてきていますね。

 

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運んでいるウェイト自体はそこまで大きくないですが、トレーラーは重荷重用の大型のものです。カウンターウェイトが大きいもので1枚で15トンあるため普通のトラックで積載量オーバーで運搬できません。現場計画を練る際はトレーラー作業スペースも確保する必要があるため、要注意です。

 

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これが今回の工事現場です。後で出てきますが、この建物の一部を解体しており、巨大な壁の一部をLTM1500でつり出します。

 

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奥に見えるのが別のLIEBHERR社製クレーンです。トレーラーからカウンターウェイトをつり下ろしています。

 

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地面で準備されている厚鉄板はLTM1500のアウトリガー設置個所になります。300mm暑さくらいはあるでしょうか。

タイヤが来る位置は木材でレールのように養生されています。

 

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カウンターウェイトをトレーラーからつり出していたクレーンは一度退きます。

中央のタイヤを除き前後のタイヤは同一方向にステアリングします(Full wheel steering)ので、斜め移動ができます。車体が大きいですが、ステアリング機能により狭所での幅寄せや旋回が容易です。

 

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いよいよLTM1500が作業場所に入ってきます。地面に敷き詰めた木材はクレーンの進入位置をマークするためのものでしょうか。作業時に荷重はかからないので本来は不要のはずです。

ひょっとしたらこの動画には映ってないですが、カウンターウェイトを積み込んだ後に少し移動したのかもしれません。その場合は輪荷重が上がっている分このように木材で地面を養生する必要があります。

 

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アウトリガーを開き、クレーンを固定します。

 

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カウンターうェイトを自分のクレーンを使って自身に設置していきます。

 

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これが1段目のウェイトです。日本のタケノコみたいなピンにどんどんカウンターウェイトを載せていきます。

 

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5軸のトレーラーですね。これくらいになると油圧ジャッキがデッキに付与されており、デッキ高さが300mmくらいは上下すると思います。

 

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これもTHOEMENの保有車両のようです。

かなり大きな会社なのでしょうか。ホームページに英語がなかったのでよく内容がわかりません。

 

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カウンターウェイトをどんどん載せていきます。

カウンターウェイトは吊り上げやすいよう突起があります。

 

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形の違うカウンターウェイトとフックブロックが運ばれてきました。

このカウンターウェイトは一つ7.5トンです。

 

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最後のカウンターウェイトが設置されました。

 

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合計で135トン分のカウンターウェイトが載りました。このクレーンの最大カウンターウェイトは165トンですので、まだこのクレーンの本気の吊り上げではないですね。

最後にホイストユニットを取り付けます。

 

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ホイストユニット下部には油圧ジャッキがついています。ジャッキを伸ばして、クレーン上部旋回体を旋回させます。

 

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旋回途中の画像です。ホイストユニットとくレーン上部旋回体をピン止めします。中央に見える穴がピン穴です。

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クレーン上部旋回体とホイストユニットが固定されたら、ジャッキを縮めてカウンターウェイトの荷重をクレーン上部旋回体にかけていきます。カウンターウェイトが徐々に上昇しています。これでカウンターウェイトとクレーン上部旋回体との接続が終わりました。

 

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次にクレーンのワイヤロープをブーム先端のシーブにかけて、フックを取り付けます。

フックは吊り上げ荷重によってサイズが違います。吊り上げ対象物の荷重が小さい場合は小さいフックを使います。大きなフックはそれだけ自重が重いため、吊り上げ容量を余分に食ってしまいます。

 

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今回は重量物を吊り上げるため、Guying Frameを展開しています。このGuying frameを展開すると、突っ張る力が強くなるため、吊り上げ容量が上がります。

ただし、Guying frameを展開すると周囲の構造物との干渉により注意が必要です。

 

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動画の最後に、Max Wildという重量輸送用Modular Trailer(モジューラートレイラー)が映っています。今回のつり荷を運び出すためのものでしょう。

とてつもないでかさです。ネットを探したらMax Wildの仕様書がありました。1軸で約30トン持ちます。最大まで連結して800トン以上の重量物輸送もできるようです。

 

http://www.goldhofer.com/fileadmin/downloads/mag_1075/2015-06_MAG1705_en.pdf

 

感想:

大型クレーンでもAll Terrain Craneであれば市街地でも簡単に持ってきて作業できるのですね。トレーラーもこれだけ大物になると、どのようにしてここまで持ってきたのか、走行ルートも気になるところです。

 

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